たくあん(その1)

 佃煮や漬物にも甘味料が入り、甘ったるいものが多い。食事の最後をお茶漬けで締めたいが、市販品ではなかなかそうはいかない。そうなると自分で作るしかない。さっそくダイコン作りからスタートである。ホームセンターでダイコンの種選びから始める。ダイコンだけでもものすごい数の品種が売られている。やはり多いのが、病気に強い、育てやすい、といった表示である。中には、「煮崩れせず煮物に最適」などといったありがたい表現もある。いろいろと見て回っていると、「おいしいつけものたくあんダイコン」なる品種を見つけた。これは買わないわけにはいかない。食べ比べをするためにもう一種、「青首長ダイコン」を購入した。土を耕し、耕し、耕して種をまいた。なぜそこまでしつこく耕すのか? それは、ダイコン十耕と言われるくらい、よく耕す必要があるからである。これを怠ると、長くていいダイコンが収穫できない。種をまいたのが8月末である。3、4日すると発芽するが、このままではあっという間に葉がなくなってしまう。どこかに潜んでいたのか、あるいはどこからかやってきた虫たちのお腹を満たしてしまうのである。それを避けるために、虫が入り込めない程度目の細かいネットを被せてやる必要がある。

 1カ所に4個ずつ種を蒔いているので、発芽後数日して育ちのいいものを2本残して他を間引く。さらにもう一度間引きをし、1本だけを残す。当然、間引いたものは、お浸しやみそ汁の具としておいしくいただく。この時期の楽しみの一つである。その後は、残った1本を大事に育てればいい。注意すべきは肥料のやり過ぎである。肥料が多いと、どの野菜も同じであるが、肝心な部分が育たず、葉や木、ツルばかりが育ってしまう。これらを総称してツルボケという。ダイコンでは葉が青々と大きく広がり、肝心の実は細く短いものができる。実を食べるよりは葉を食べた方がいいようなものができる。人間もあまり食べすぎるとツルボケに・・・。気をつける必要がある。

 10月も末になると、そろそろダイコンを収穫する時期である。あまり長期間育てていると“ス”が入ってしまう。収穫したものをたわしできれいに洗って土を落とす。青首長ダイコン:15本、たくあんダイコン:19本である。見てわかるように、同じダイコンでも性格が全く違う。狭い場所にぎっしりと植えた結果がはっきりと出ている。青首長ダイコンは、窮屈なところでもお互い気を使い、譲り合って協調しながらまっすぐに伸びている。周りの邪魔にならないように葉も少ない。なかなか優等生である。それに比べるとおいしいつけものたくあんダイコンは、周りを全く気にせずやりたい放題である。葉は相手かまわず広がっている。自分のことはそっちのけでありながら、他のダイコンの葉は邪魔に感じるらしい。逃げるように体をひねったために、くの字になってしまったものがかなりある。結構わがままで癖が強い。両方のダイコンをかじってみたが、味の方はともに辛味も癖もなく優しい味であった。さて、両者が漬物になったときは、どのように個性を表現するのか今から楽しみである。「真面目な青首長ダイコン」対「自由奔放なおいしいつけものたくあんダイコン」、結果が出るのはもう少し先である。

<発芽>

 

<寒冷紗で虫から保護>

 

<おいしいつけものたくあんダイコン(左)と青首長ダイコン>