13.ロードバイク

 25年くらい前、自転車に乗り始めたころはロードレーサーといった。それがすっかりと染みついて、それ以降もずっとロードレーサーで通してきた。しかしいつの頃からか、ロードレーサーとはいわれなくなってしまった。マウンテンバイク、クロスバイク、そしてロードバイクというようになった。我々の年代ではバイクといえば、どうしてもオートバイを意味してしまう。人力とエンジンでは全く心臓部が違うのである。どう頑張っても人力ではガソリンエンジンにかなわない、などと理屈をこねてみてもしょうがない。専門誌、自転車売り場、会話のすべてがロードバイクである。

 ロードバイクという表現は10年くらい前から気になっていた。しかし、ロードレーサーで通じるし、不便を感じなかったのでそのまま使い続けてきた。このコーナーを立ち上げてから、そのあたりが再度微妙に気になりだした。言葉というものには流行があり、それが頻繁に使われると一般化してしまうからである。もはや、ロードレーサーは死語と化してしまっているようなのである。そこで、ロードレーサーについて調べてみた。1990年ごろまでは「ロードレーサー」と呼ばれていた、というような記述を見つけた。もう30年近く前である。このころにロードバイクという名称が出始め、しばらくは混在していたのだろう。それがいつの間にか「ロードバイク」一辺倒になってしまった。「ロードレーサー」というのは和製英語で、アメリカ英語では「ロードバイク」、イギリス英語では「レーシングバイシクル」となるらしい。とはいえ、今の日本では何を見ても、どこで聞いてもすべてアメリカ英語の「ロードバイク」という表現になっている。これはもうロードバイクと呼ぶしかないだろう。そして、今後はこのコラムでも、ロードレーサーとは呼ばず、ロードバイクという呼び名を使うこととする。

 「レーサー」というほどとんでもなく速く走れるわけではない。かといって、「バイク」というエンジン付きのタフさとスピードを兼ね備えているわけではないが、ここは流れに乗ることにしよう。バイクの方がなんとなく後ろめたさがなくていい。近いうちに、六甲山ヒルクライムを敢行しようと思う。「ロードレーサー」ではなく、「ロードバイク」で。タフな走りでかなりタイムを縮められそうな気がするのだが・・・。単なる気のせいだろうか?