トウガラシ

 トウガラシを定期的に栽培している。理由は、調味料として非常に重宝するからである。一度栽培すると、数年は大丈夫である。前回はタカノツメを栽培した。通常、実のなる野菜は茎から下に向かって垂れ下がるものである。しかし、タカノツメは上を向いて実をつける。真っ赤になるまで木に付けておき、その後収獲して乾燥させる。完全に乾燥させて、瓶に入れて密封しておくと数年は大丈夫である。そろそろ、タカノツメが底をついてきたので、去年は王建という品種(韓国トウガラシ)を栽培した。大きさは、長さにしてタカノツメの2倍はある。非常に大きい品種である。辛さはタカノツメよりやや弱い程度である。タカノツメが4~5万スコヴィルであるから、2~3万スコヴィルといったところだろうか。トウガラシの辛さの最高値は毎年のように更新され、今では200万スコヴィルといったものまである。タカノツメでも相当辛いのに、200万スコヴィルという値になると想像すらできない。タカノツメをかじろうものなら、頭から汗が流れて止まらなくなってしまう。不思議と顔と頭からしか汗が出てこない。しかし、汗の量は相当である。タオルが必要なくらい出る。もう少し全身に分散してもらいたいものである。下を向いて食べると、自分の汗が食べ物に入りそうである。

 トウガラシはナスビと同じく、花が咲けば確実に実ができる。しかも長期間咲き続ける。初夏から晩秋まで収穫できる。特に暖冬であったため、12月初旬まで収穫できた。ただ、寒くなると真っ赤に完熟するまでに夏ごろの2倍程度の日数がかかる。1本の木から収穫する量は相当な数になる。去年の王建は幸運にも育ちがよく実が多く付いた。最終的に完熟し赤くなったものを数えてみると、1本の木から200個以上を収穫することができた。これらを天日干しし、パックに入れて保存する。最初の利用はたくあんであった。もちろんおいしいたくあんになったことは言うまでもない。

 完熟して真っ赤になったものを干し、調味料とするのが一般的であるが、青い状態でも十分に辛い。我が家では「柚子胡椒」の材料にする。柚子胡椒とは言っても、使うのはレモンと王建である。レモンは菜園の一角で育っている。品種はリスボンといって、ラグビーボールのような細長い形ではなく、やや丸みにある形で酸味はそれほど強くない。これの皮を使用する。王建は適当な大きさに切り、両者をミルに入れる。塩少々を入れて混ぜ合わせれば出来上がりである。流動性が悪くパサパサしているようであれば、レモンを少々絞って入れればOK。これを瓶に入れて冷蔵庫で保存すれば、しばらくは香りのいい柚子胡椒が食べられる。柚子胡椒と言いながらトウガラシを使用するところに違和感があるが、柚子胡椒は九州名産であり、九州の一部ではトウガラシのことをコショウと呼ぶので、それに従っているのである。また、柚子の代わりにレモンを使うのは、似たようなものなのでレモンで代用しているのである。したがって、正確に言うと「レモントウガラシ」である。しかし、これではピンとこないし語呂も悪い。味と香りは非常にいい。鍋物や焼鳥、カツオのたたきには最高によく合う。

 柚子胡椒を作る上での注意点を一つ。トウガラシを刻んだ手をタオルで拭いたときは要注意である。間違ってもこのタオルで顔を拭いてはいけない。もし、目の周りを拭いたりした場合は、しばらく涙が止まらなくなる。目以外でも、カッカ、カッカ、ヒリ、ヒリとして、顔が変形するのではないかと心配になるくらい続く。

 調味料として重宝なものをもう一点、辣油である。作り方は簡単である。ごま油を熱し、乾燥させてみじん切りにした王建を中へ投入する。最初はぱちぱちと音がして、水分が抜けていくのがわかる。大事なのはここからである。水分が完全に抜けた後、さらにしばらく熱し、やや焦げ目をつけるのである。そうすることで香ばしい辣油が出来上がる。この時出る湯気を吸うと、とんでもなくせき込むことになる。また目に入ると涙が止まらなくなるので要注意である。出来上がった辣油は、餃子、麻婆豆腐と最高の相性である。

 今回は予想以上に多くの王建を収穫することができた。この量は数年間では食べきれない量である。新たな利用方法を考える必要がありそうである。

 

        <王建>

 

 <リスボン>

 

  <柚子胡椒(青唐辛子)>

 

   <柚子胡椒(赤唐辛子)>