108.優先座席
公共の乗り物に乗ると必ずといっていいくらい優先座席がある。その説明を見るとおおむね、「お年寄りの方」「体の不自由な方」「妊娠されている方」「乳幼児をお連れの方」「内部障がいのある方」となっている。あいまいな表現が多い。5項目ではっきりと判断がつくのは「乳幼児をお連れの方」だけである。それには、お母さんと思われる人が乳幼児を抱いている絵が添えられている。それ以外はすべて自己申告がなければわからない。したがって、自分が50歳でも年寄りだと思えば座ってもいいし、80歳でも年寄りだと思わなければ座らなくてもいい。このような人が座席を譲られると、結構自尊心が傷つくのではないだろうか? 席を譲ったほうも譲られたほうも、お互いが気まずい思いをする。その他、誰が見ても妊婦とわかるくらいおなかが出ていればいいが、それほど目立つわけではないが、つわり等で体調が悪い場合もある。まさか、「あなたは妊婦ですか」とも聞けない。内部障がいに至っては全くわからない。
最近電車内でよく見かけるのがベビーカーである。しかし、このベビーカーというものの位置付けがはっきりとしていない。車いすに関しては、座席を取り外して、そこに車いす用のスペースが作ってある場合がある。乗降する際も、駅員がスロープを持って来て手伝っている。一応のルールが確立されている。しかし、ベビーカーについては全く何もない。当事者任せである。改札からホームまでは、エレベータを使わずにエスカレータを使っている人をたまに見かける(子供は配偶者が抱いている)。これは迷惑この上ない。車内でも居場所が確立されていないのでたまに迷惑をこうむることがある。ドアを入ったところで数台が固まっている場合がある。他の乗客の乗降に迷惑この上ないが、まったくお構いなしでおしゃべりをしている。あるいは、ベビーカーを押して車内中央まで行き、席にどっかと座る。そしてその前にベビーカーを置く。どうやって通路を通ればいいの? という状況の中、平気で携帯をいじっている。乳幼児を抱いた「乳幼児をお連れの方」なら優先座席に座れるが、ベビーカーではそこへ座りにくいのであろう。そこで通常の席へ座る。これでは優先座席以上の優遇座席である。
優先座席が本当の意味で有効に使われているとは思えない。そのような形だけのものをいつまでも設置する必要があるのだろうか。とはいっても、もし優先座席を廃止するような電鉄会社が出てくると、世間やマスコミから徹底的にたたかれるであろう。ホームページの炎上は間違いない。それが怖くてなくすこともできず、かといってその運用を徹底することもできない。とりあえず苦情が出ないようにして、あとは客任せといった感じである。客は客でそのような表示はまったくお構いなしである。絶対に座りたくない座席である。そこで提案である。前期高齢者以上の人が3割近くおり、それ以外にも優先座席を必要とする人が多くいることを考えると優先車両を作ってもらいたい。人口の半分は女性である。その女性が迷惑を被らないように女性専用車両がある。それを考えると優先車両があっても不思議ではない。車両の端っこにわずかばかりの優先座席ではとても足りない。もし、車両内の全高齢者が座りたいと主張した場合どうなるのか。全員に年齢を聞いて高齢者から順番に座る? 病院の診察券の枚数で決める? 腕力勝負? 優先座席に「お年寄りの方」という表示するのであれば、どう見ても席数が足りない。高齢者を弱者と考えているのであれば、それに見合う数が必要であろう。高齢者以外にも、「体の不自由な方」「妊娠されている方」「乳幼児をお連れの方」「内部障がいのある方」がおられる。このような車両ができれば、みんなが気持ちよく乗車できるのではないだろうか。
PS.
かつて、女性専用車両とは知らずに乗ったことがある。座席で寝ようとしたところ、次の駅で駅員が乗車してきて注意を受けた。この時、恥ずかしさよりも携帯電話の便利さと怖さを思い知らされたような気がした。