116.少子化(その2)
今年もスズメの繁殖期になった。例年せわしなく草のきれっぱしを咥えて飛び回る姿を見かける。今年もその姿をしばしば見かけた。巣作りに適した場所が見つからないのか、それとも安全を最優先してなのか、電柱に取り付けられた電線の支持材に巣を作っている。1辺が7~8cmていどの四角い筒状の支持材である。これなら天敵のカラスがやってきても、雛の安全は確保できる。
雛は卵からかえると、鳴き声を発するのですぐにその存在がわかる。この時期は特例で、我が家の餌台にはやや多めの餌を配置することにしている。数週間もすると、ぎこちない飛び方で親鳥と一緒にわが家の餌台にやってくる。ただ、まだ親から一通りのことを教わっていないので、人間に対してもそれほど警戒心がないようである。親鳥が一斉に逃げてもなかなか飛び立とうとはしない。そのうちに親鳥の鳴き声に促されて飛び立っていく。この時期は、親鳥と一緒にやってきても自分で餌を摂れない。摂れないというのが正しいのか、親に甘えているというのが正しいのかはわからないが、親に餌をねだっている。その姿は非常にかわいい。両方の羽をだらりと下げ、小刻みに震わせるのである。これはだれが見てもそれとわかるしぐさである。このしぐさをされれば餌をやらざるを得ないだろう。この状態がしばらく続くと、親も見切りをつけるのか、子スズメは自分で餌をついばむようになる。
今年は2番(つがい)の子スズメを見かけたが、ともに一人っ子である。例年2、3羽の子スズメがいるのであるが、今年はさらに少なくなっている。子スズメは親に比べると、飛び方や動き方が緩慢であり、鳴き方に甘えたような響きがある。全身の黒や茶色の部分が薄く一目でそれとわかる。この2羽以外に見かけないところを見ると、これがすべてなのかもしれない。
先日も目にしたのであるが、最近この辺りにチョウゲンボウが頻繁に出没している。さすがに猛禽類である。その狩りはなかなか見事である。ぎこちなく飛んでいる雛ではひとたまりもない。カラスも増えている。年に数回であったカラスの大集会が、最近では頻繁に行なわれている。朝から夕方まで屋根や電柱に止まり、カァー、カァーと鳴き続けている。これではスズメも餌の調達に飛び回れないだろ。ただじっと身を潜めているしかない。
温暖化で変化する自然環境に対応できないのが原因か、それとも天敵のチョウゲンボウやカラスが原因なのかはわからない。原因はわからないがスズメが減っているのは間違いないようだ。環境の変化、天敵の数、どちらを止めるにも莫大な金と労力を要する。これらを投入することができれば問題はないが、それが出来なければ、対象となるものがそれに自ら対応するしかない。“対応”というのは簡単であるが、実行することは非常に難しい。