33.本(その2)

 本に関してはいろいろと思い出がある。最も印象に残っているのは、高校生の時、担任の先生(30歳台前半)の家へ遊びに行った時のことである。それまで住んでいたアパートの床が抜けそうになったので家を新築したという。原因は本の重量である。新築の書斎は特注で、床を補強し窓はなく、入り口以外は天井まで作り付けの本棚である。部屋の中央にも背中合わせに本立てがある。そこに本がびっしりと収まっていた。場所によっては、本を横にして無理やり乗せてある。読書嫌いな高校生にとっては衝撃的な光景であった。自宅に図書館があるようなものである。これだけの本を読むのにどれくらいの時間が必要だろう? 教科書さえ読むのがおっくうな人間にとって、これは想像の域を超えていた。

 その影響もあったのか、徐々に本を読むことが多くなり、自宅に本が増えだした。4台目の本立ての購入を考えているころ、子どもの安全(地震での転倒)を考え、すべて段ボール箱に詰めて押入れで保管することにした。その後、子供のおもちゃが増えだし、押入れがおもちゃに占領されてきた。いよいよ本の行き場所がなくなってきたので処分することにした。これらの本は引っ越しの時にごみとして処分してもらった。今のように古本の買取りというものが一般的でなかったからである。このときを機に、本の所有は全くしていない。読み終われば処分である。もともと、同じ本を何度も読み返すということをしないので、何の抵抗もないといえばないのであるが・・・。

 200頁程度の新書が1冊800円前後で購入できる。これを数時間かけて読み、知識や興味が得られれば安いものである。十分に満足感が得られる。中には読みだして数頁で失敗したという本もたまにはあるが・・・。これは購入時にしっかりと吟味すれば解決できることである。満足した本もそうでなかった本も書店の下取りに出す。今では古本の買取りを多くの書店が行っているので助かる。全国展開している本屋へ連絡をしたところ、梱包さえすれば宅急便が自宅へ取りに来てくれるという。そして数日後に買い取り価格を表示した明細書が送られてくる。800円前後で購入したものが10円~150円という引き取り価格になっていた。基準はよくわからないが、やはり需要の高いものは高価な値段での買取りとなるのだろう。知的価値として購入したものが、商売的価値に変化するのである。

 読み終われば処分するのであるから、古本を買えばいい、というものでもない。まだ、そこまでの域に達していない。やはり本は商売的価値ではなく、知的価値として購入したい。ムダな出費のようであるが、唯一の贅沢である。と、まあここまでは格好がいいのであるが、いかんせん相変わらず結果が伴わない。思ったほど知識が身に付いていないのである。それはともかくとして、どういうわけか数冊の本が下取りから戻ってきた。同封されていた説明文を読むと、同一タイトルの本は1冊のみ引取可能となっていた。おそらく、同一タイトルの本を複数冊購入することはないので、万引きをしたものとみなされたのであろう。単に勘違いして(決してボケているわけではないが)購入しただけなのだが・・・。

 そろそろ古本の購入を考えるべきか、それとも、これを機会に電子書籍を検討するべきか・・・。