77.手甲

 手甲という言葉を聞いたことがあるだろうか? どう読めばいいのかな? という人も多いのではないだろうか。「てっこう」と読むのである。かつてよく見かけたのは植木屋さんである。松の葉刈りや植木の剪定時に手を傷つけることがないように着けていたものである。今は自宅の庭に大きな植木を植える家庭も少なくなり、植木屋さんが入って庭の手入れをする姿を見ることも少なくなった。

 かつての手甲は分厚い綿の布で作られており、これを手に巻き、こはぜで留めるのである。これを着けるだけで立派な植木職人に見えたものである。もちろん足元は地下足袋である。このいでたちで脚立に上り、植木の剪定をするのである。そんな職人が着けるようなものがネットで購入できる。1000円前後である。自宅で使うとすれば夏の家庭菜園だろうか? 暑いので半そでで作業をしたいが蚊に刺されるのは嫌だ、というときに最適である。しかし、使ってみてすぐに不向きだと気が付いた。汗ですぐにびしょびしょになるからである。

 そんな手甲が最近脚光を浴びることとなった。どう脚光を浴びるのか? 机に向ってのデスクワークの時である。机に向かい、パソコンを扱っていると、手首からひじのあたりが机と接することとなる。するとこの部分が汗をかいてべとつくことになる。今までは、これを避けるために、机のその部分にタオルを敷いて、汗を吸収させていた。しかし、すぐにずれてしまうため何度も位置を修正しなければならなかった。最終的にはカーペットのすべり止めシートを敷いて使用していた。それでも両端はクリップで机としっかり固定する必要があった。字を書くときは下敷きを敷かなければ書けない、本を置いたときにずれる等があり、なかなかしっくりとこなかった。

 そんな時、部屋の片隅にぶら下げていた手甲が目に入った。これはこはぜで固定するタイプではなく、筒状で上部と下部にゴムが入っているタイプである。服の袖口が汚れるのを防止するために使用していたものである。ひょっとするとこれはいいかもしれないという思いがした。早速手にはめてみると、なんとも最高の着け心地である。手と机が接しても全くべとつかないし、机の上はすっきりとした。これでもう無敵である。パソコンを扱っても、本を読んでも全く気にすることがなく集中できる。さらに効果を発揮するのは新聞を読むときである。通常、新聞の上に手をのせて、順次読み続けていると、手首から肘の部分あたりが活字で黒く印刷された状態になる。カラー部分であればもちろんその色が付くことになる。手甲をつけることで、これがまったく気にならない。

 こんな小さなことに感動する自分に感動している。