その2

<その11>径:80mm×高さ:90mm

 これはタヌキの置物で有名な信楽焼である。土はタヌキと同じこげ茶色である。大量の小石(直径1~2mm)が混ざっている。したがって、表面も内部もごつごつしている。いくら手がカサついているときでも、滑り落ちることはない。手でしっかりとグリップできる。長時間焼いた証として、火おもてには黒い釉薬を流したように見える自然釉が付いている。一見、真っ黒のように見える湯呑であるが、よく見ると、焦げ茶色で所々に緑色がかった釉薬が流れている。内部も黒っぽいので煎茶ではお茶の色を楽しめない。番茶やほうじ茶であれば気にせず飲むことができる。

 ざっくりとした本体に負けないような高台が付けられている。小石が混じった土がむき出しになっているので、直接テーブルに置くことはできない。茶托があったほうが無難である。とはいえ、湯呑は直接テーブルや机においてこそその利用価値が出る。そこで、このような場合の対処法としては、高台をコンクリート床で軽くこすり、その後、細目の砥石でこするといい。こうすればテーブルですっても傷つけることがなく安心して使える。

 

<その12>径:75mm×高さ:85mm

 備前に近いような土色と焼しめられ方である。これは丹波の立杭焼である。しっかりと焼しめられた湯呑の手前側には自然釉が覆いかぶさるように垂れ下がっている。この反対側の内側にも同じような自然釉の短い流れがある。窯の中でものすごい火炎の流れが発生し、それが湯呑に当たり、自然釉を付けたのであろう。火炎が龍のようにくねりながら動いていく様子が目に浮かぶようである。ごつごつした表面に、自然釉がうっすらと盛り上がり、つるりとした肌触りが気持ちいい。無造作に切り取った高台が素朴な感じを出し、自然釉の流れをより強く印象付けている。湯呑は小さめで、煎茶が冷めない程度で飲み干せる大きさである。冬の寒い時期には最適な器である。

 

<その13>径:90mm×高さ:85mm

 これは狸の置物で有名な信楽焼である。信楽の町に入るとあちこちの窯元の軒先に大狸、小狸が所狭しと並べられている。それらにはほとんど興味を示さず、店の中に入っていく。

 お目当ての湯飲みが並んだコーナーへ吸い寄せられていく。色々と目移りするが、やはり最初に目についたものが最もいいような気がする。これはその最初に目についたものである。色も形もそれほど特徴があるわけではない。素朴な感じの湯飲みである。高台は安定良く器とのバランスを取ったようなものではなく、曲がって変形している。何ともぶっきらぼうな感じの高台である。土には白い小さなビーズのような石がごろごろと混ざっている。表面に出ている石は目玉のようにも見える。器の中にはもっと多くの石が顔を出している。石爆ぜもあり、そこにお茶が浸み込みいい景色を作っている。

 釉薬を掛けず、炎と灰釉だけで色付けられた湯呑である。備前や丹波と並び地味な色合いを楽しむことができる。中は色が薄いので、お茶の色がはっきりと見え、より一層味を引き立ててくれる。夏に冷やした煎茶を飲むのもいいが、抹茶を冷やしてシェイクしたものを飲むのが最高に旨い。

<その14>径:80mm×高さ:90mm

 これは倉敷の酒津焼である。倉敷の町並みには備前焼を置く店が多いが、備前と倉敷は相当離れている。倉敷にはやはり倉敷の焼き物を置くべきである。そこでこの酒津焼である。陶工は山口の萩から来たそうなので、萩焼に近い焼き物もある。これはナマコの釉薬がかかった湯呑である。湯呑の前面と後面でやや色合いが変わっている。前面を黄色地に茶色の斑点とすれば、後面は薄い水色地に茶色の斑点である。まさしくがらりと色が変わっている。落ち着いた色合いから、がらり一遍明るい湯呑へと変身する。なかなか面白い湯呑である。冬によく合いそうな温かみを感じる湯呑である。内側はやや黄色味を帯びた薄い灰色である。お茶の色がはっきりとわかりありがたい。高台は2段に仕上げられていて、接地部分の斜めに削られた部分には釉薬がかかっていない。きめの細かいきれいな粘土が見える。上品な高台が湯呑全体を優雅に見せている。