カメオ

 知人から大きな蛤をいただいた。旨い。非常に旨い。とっても旨い。これほどの蛤は食べたことがない。食べ終わった貝殻がじっとこちらを見つめている。一生懸命成長してここまで大きくなったにもかかわらず、「旨い!!、で終わりかい」という声が聞こえてきそうである。これは何としても何とかしなければならない。しかし、何をしていいかわからない。とりあえず、きれいに洗い陽に干して乾燥させよう。乾燥させること数か月。そろそろこれを何にするか検討しなければならない。またまた貝殻がこちらをじっと見つめている。

 貝殻の加工でよく見かけるのはカメオである。これの材料は巻貝で色と厚みに特徴がある。ハマグリは聞いたことがない。色はともかくとして、相当な厚みがないと浮き彫りはできない。碁石の白はハマグリの殻であるということを聞いたことがある。殻の厚みを測ってみたところ、厚いところで4.5mm、薄いところで2.5mmあることがわかった。2.5mmあれば十分作品を作ることができる。早速、試作品作りに取り掛かる。意外と貝殻が脆いということがわかった。あまり強引に削るとパリッと割れてしまう。脆さと同時に熱にもあまり強くなさそうである。これらは作業を慎重にすることで回避できそうである。それと同時に回避できないものがあることもわかってきた。それはそれぞれの貝の特徴というか、性格というか、そういったどうしようもない問題を抱えていることがわかった。真面目で几帳面な貝は、貝殻全体を非常にきめ細かく均一に作ってくれているのであるが、いい加減な性格(?)の貝は貝殻が均質ではないのである。貝殻の層がしっかりと固着していない。この対応にはよりきめ細かな作業を強いられる。強引に研磨すると、層がごっそりとはがれてしまうのである。数年間毎日毎日緊張感をもって貝殻を作っているわけではないので、しょうがないといえばしょうがないのであるが・・・。たまには疲れた日もあるだろう。殻作りに集中できない日もあるであろう。しかし、体は大きくなるので殻も大きくしていかなければならない。そうすると、手抜きをするつもりがなくても、ちょっと雑なものができてしまうのだろう。表面にきれいな模様をつけておけば、見えない部分はまあいいか、ということにしているのかも知れない。まさか死んでまで、本来の目的からかけ離れた殻に対して、こんな厳しい苦情を言われるとは思ってもいなかったであろう。何事も、見えないから、重要ではないから、といって手を抜くことがないように、という戒めとして心に留めておこう。

 とは思いながらも、デッサン、立体表現のまずさを取り繕うために、表面だけはきれいにバフ研磨をして、ピカピカに仕上げておこう。

 ここからは、順次出来上がったカメオをアップしていくことにする。

<その1>ユリ