水出しコーヒー

 「ここだけのはなし」でも書いたようにコーヒーはよく飲む。夏でもホットで飲む。温度が下がらないように電熱器を利用して保温しながら飲んでいる。コーヒーは苦味や渋み、酸味を味わうものであるが、まろやかなコーヒーを飲みたいときがある。お湯で入れるとどうしても苦味やえぐみが強く出てしまう。水出しコーヒーにすると、それらが薄まりまろやかなコーヒーになる。ダッチコーヒーである。この由来は「オランダ領であったインドネシアで広く栽培されていたロブスタ種は、コーヒー豆の中でも苦みやえぐみが強かった。これをまろやかにするために、湯ではなく水で抽出するようになった」というように書かれていた。喫茶店で見かける独特な形をした器具でドリップしたものである。ガラス製でかなりの大仕掛けである。見た目で高価なものと判断が付く。とてもこれを自宅では所有できない。ではどうやって水出しコーヒーを作るか。使用するものは2リットルのペットボトル。これを半分に切りキャップの付いている側を使用する。キャップを取り外し、そこに極小さな穴をあける。ここから水を出せば水出しコーヒーの出来上がりである。早速製作に取り掛かる。わがアトリエで所有している最小径のドリルは0.8mmである。これで穴をあけ水を入れてみた。何と、恐ろしいほどの勢いで水が飛び出す。これではコーヒー豆のエキスを抽出する前に終わってしまう。これ以上小さな径のドリルがない。今度は針の先端を焼き、真っ赤になったもので穴をあけてみた。0.8mm以下であることははっきりとしているが、やはり勢いよく水が飛び出す。穴が開いていなければ水は出てこないが、穴をあけると水が出過ぎる。難題である。

 穴をあけることをあきらめた。見えるところから水が出るようでは量が多すぎる。見えないところから出さなければならない。それには水を染み出させるしか方法はない。ペットボトルの口に、ペーパードリップ用の紙を丸めて詰め込んでみた。非常に微妙な巻き加減が要求されるが、コツをつかめば簡単である。水を吸うとやや膨らむのでそのあたりを加減して巻いていくと、ポタリ、ポタリと水滴が落ちだす。あとはこのポタリ、ポタリの間隔を決めればいい。コーヒー豆の粉末の入った容器の上から、調整済みの水滴を落とせばおいしいダッチコーヒーができることになる。早速、アトリエ内にあった紙筒と割りばしで装置を組み付けた。簡易ダッチコーヒー器具の完成である。使用する豆は中煎りの豆がいい。深煎りだとせっかくのまろやかさが失われてしまう。浅煎りではやや物足りなさを感じる。そして、お湯で出すときに比べてやや多めの豆を使用する。夜セットしておくと、翌朝には美味しい水出しコーヒーの出来上がりである。このまま飲んでもまろやかで最高に美味しいのであるが、ちょっと濃い目に出し、冷やしておいたものを牛乳で割って飲むのもいい。夏の暑い時期は最高に美味しい。菜園作業で疲れたとき、ゴクゴクと一気に飲むとさらにいい。飲み終わるとビールと同じで、思わず「ぷっふぁー」といってしまう。