ペンダント

 

 これは竹製のペンダントである。真竹を2枚張り合わせたものに数種類の漆を塗り重ねてある。基本の色を赤、あるいは黒にし、黄色や緑、金、銀色を配置していく。ある場所は丸く、またある場所は細長く色漆を塗る。それらを適度な間隔で配置したり、重ねたりしながら作業を進めていく。毎回指摘しているが、漆は塗った後乾燥させるのに数日かかる。冬であれば1週間程度は必要となる。乾く前に塗り重ねると、内部がぶよぶよしたままで、完全に硬化するのに数か月を要してしまう。しかも硬化した表面は波打って、きれいに仕上がらない。それらを取り除くのに表面を研磨しなければならず、せっかく出来上がったきれいな模様が台無しになってしまう。

 漆を塗り重ねること数十回。最後に基本となる赤、または黒を数回塗り固める。期間にして1年。ようやく研磨である。表面の凸凹を取り除き、最もきれいな模様が出てきたところで研磨をやめる。それ以上研磨すると模様が単調になるとともに竹の地肌が出てきてしまう。♯1200程度の非常に細かいサンドペーパーで磨いても、ほんのわずかに磨きすぎることで模様が一気に変わってしまう。非常に繊細な作業である。今回ここに展示したものは、それぞれ最高の模様であると確信している。しかし、ひょっとするともう数回擦ることで、さらに素晴らしい模様が出てくるかもしれない。真っ黒(真っ赤)なところから徐々に色が変化してくる。その変化の過程を十分に考慮し、かつ塗り重ねてきた過程を思い浮かべながらこれがベストという見極めをする。あとは漆の光沢を十分に引き出しピカピカに仕上げる。

 鎖を付けてペンダントにするのもよし、バッグの飾りにするもよし。用途はいろいろとある。自分だけの個性を演出できる小物である。