フライボックス(その1)

フライボックス(縦90×横148×高さ40mm)

 フライフィッシングをするにあたり、最も重要なものといえばフライである。フライとは、人工物や自然の材料を使って、いかにも自然界にいそうな昆虫に似せた疑似餌である。水に浮くものや水中を浮遊するものもあるが、やはりその醍醐味は水面に浮くものである。川の流れにまかせて、ゆらゆらと流れていると、突然、魚が水中から口を開けてぱくりと食べにくる、ということになっているのであるが、そのような光景をまだ目にしていないのが残念である。

 フライの材料で、最もよく使われるのが糸や鳥の羽である。色とりどりの糸や羽で、本物そっくりに作るものや、ちょっと大げさに表現したものまでいろいろとある。その時々の魚の食欲に合わせたものを作る(作っているつもりであるが、なかなかマッチングが難しい)。フライフィッシングの店よりも、ユザワヤのほうが気に入った材料が手に入るのでよく行ったものである。特に、京王吉祥寺駅にあるユザワヤへはよく足を運んだ。今はもっぱら三宮のユザワヤである。若い女性からは、変なオヤジが糸や毛糸を物色している・・・、といった目でよく見られたものである。針の大きさや巻く糸の色を変えてみたりしながら、大量に作るのである。魚の好みがわからないこともあるが、多くのフライをなくすことにも原因がある。日本の渓流は両サイドから木々が迫り、ほとんどロッドを振ることができないからである。もっと遠くへ飛ばそうと力が入ると、木の枝に引っかかってしまう。極力自然に人工物を残さないようにしようとして、回収を試みるのであるができない場合が多い。

 このフライケースは木製である。これをフィッシング用のベストの胸ポケットへ入れて移動するのである。なぜ木製にするかというと、沈まずにぷかぷかと浮いてくれるからである。足場の悪い渓流を移動していると、ついふらつきフライボックスを落としてしまうことがある。そんな時、木製であれば決して沈むことはない。流れに沿って追いかければ、いずれ回収することができる。貴重な屋久杉を使っているので、どこまでも追いかけることになる(以前掲載した時計ケースと同じ材料である)。屋久杉はものすごくいい香りがする。どうもこれが災いしているのかもしれない。この匂いは人間にとって心地いい香りであっても、魚にとっては決していい匂いとは限らない。かつて、アユの友釣りをする人から聞いた話であるが、タバコをやめたときからよく釣れるようになったという。タバコの臭いが手にしみついており、その手でおとりのアユを触るので、臭いが移っていたのではないかという。それくらい臭いには敏感であるという話であった(事実関係は不明)。