焼酎サーバー
この徳利を見てぴんときた方は相当な日本酒通であろう。愛媛県の銘酒梅錦である。この徳利の容量は3升である。胴回り:65cm、高さ:37cm、総重量は6kg(満杯時)を超える。20年位前にたまたまこの徳利を手に入れ、ここに数種類の焼酎を入れて、ブレンドして飲んでいた。しかし、満杯のときは重すぎて、適量をコップに入れるのに困難を極めた。そのため、早く軽くしようと一生懸命飲むことになり、健康上よくなかった。1升瓶に入った焼酎をブレンドするには、どうしてもこの程度の容量は必要となる。そこで思いついたのが、この徳利にコックをつければ、簡単にコップに注げるだろうということである。そして完成したのがこの焼酎ブレンド用徳利である。
この徳利を見て「えっ!」と思われた方は、すごさがわかる方である。我が家では全くの不評であった。というよりも全く関心がなかった。本体そのものに興味がないので、それに伴う技術に関しても関心がないのである。結局自己満足するしかないのであるが・・・。それではあまりにも情けないので、ちょっとだけ説明を加えることとする。徳利は焼き物(美濃焼)であるから、コック用の穴はルーター(歯医者が歯を削るときに使う器具)で簡単に開けられる。しかし、問題はコックを取り付ける6角ナットを、どうやって徳利の中から締め付けるかということである。徳利の口は直径が3.5cmである。手は全く入らないし、指が入ってもコックの位置までは32cmもあり、6角ナットを回すことはできない。長生きはするもので、十分な経験とちょっとした知恵と技術がこの作業を可能にした。飲み物を入れる容器であるため、もちろん接着剤は一切使用していない。使用しているのは、コック取り付け部品であるシリコンのパッキンと6角ナットだけである。轆轤で作った陶器であるため、轆轤目が波打っており、厚さ3mm程度のシリコン製パッキンで、漏れを防止できるかどうかが心配であった。なんとか、徳利が割れることなく、漏れが生じない程度まで6角ナットを締め付けることができた。あまりくどくどと説明しても、本体に興味がなければ、それに伴う技術や知識についても興味がわかないであろう。「それがどうした?」「だからなんなんだ!」で終わってしまうのである。何事も全力で取り組み、結果が出るとやはりうれしいものである。焼酎を1升瓶で購入して、しばらくはそのもの単体で味わう。その後はここへ投入する。これを次々と繰り返す。やがて、うなぎ屋や焼き鳥屋のたれのように、創業以来30年、50年継足して使用している、というのと同じような状態になる。たれとの違いは、毎回味が変わるところである。これはこれで非常に楽しいことである。中身を飲み干さない限り、最初に入れた焼酎は何十分の一かに薄まってでも、そこに残って存在をアピールしていることになる。もう何十種類混ぜたことだろう。芋、麦、蕎麦、米等、種類も豊富である。最近は芋焼酎が多いので、風味的には芋である。
結局、自己ブレンドの焼酎を飲みたい一心で出来上がった作品である。酒に興味のない人には全く理解できないばかりか、起こりえない発想である。