バンブーロッド
ここで取り上げているロッドとは、バンブーロッドのことである。渓流で使用するフライフィッシング用の六角竹竿である。カーボン製の高性能なフライフィッシング用のロッドが主流の中、なぜ今、低性能でメンテナンスが大変なバンブーロッドなのか? しかも、時代に逆行したものを使うだけでなく作ろうというのか? ランディングネットと同様に、ここにも美しさがある。竹の美しさ、竿の形状の美しさ、竿を振った時の美しさ(これは自分では見られないのであくまでも想像)と感触が創造欲を掻き立てる。カーボンロッドを振った時のようなサクサクとした機敏な反応なはい。ちょっとタイムラグのある、おっとりとした反応の悪さが、渓流という厳しい自然に直接触れることを和らげてくれる。
バンブーロッドを簡単に説明すると、美しいカーブを描いた正三角錐を6本接着して、正6角錐の竿を作ることである。その先端は1.5~2mmで、カンナのみで仕上げるのである。表面は竹の美しい繊維が出ている。さらに美しさを出すことと耐久性を持たせるため塗装をする。いろいろとコーティング剤はあるが、最も気に入っているのは漆である。実用性と美しさを兼ね備えた最高の天然塗料である。こちらはランディングネットと違って、いかに薄く塗るかということに注力している。昔ながらの拭き漆という技法である。これにより非常に薄くかつきれいな塗装面が完成する。塗装による重さも軽減されるので、通常のバンブーロッドよりはサクサク感がある。
バンブーロッドの肝は、竿全体をどのようなカーブに仕立てるか、という説明をよく聞くが、これには賛同しかねる。たしかに、このカーブで使いやすくもなれば、使いにくくもなるだろうが、ガイドの位置と数、塗装など、付加重量といったものが竿の性格に大きく影響を及ぼしているように思う。いろいろと試行錯誤をしながら作り、振り、反省し、また作る。それらをここに披露する。