アリの戦略

 わが菜園内には多くのナメクジやダンゴムシが生息している。それぞれはうまく棲み分けをして、争いが起こらないようにしているようだである(両者が戦っているところを見たことがないので・・・)。そんな中、最近になって気になりだしたのはアリの存在である。小さくてあまり目立たなかったのであるが、数年前にイチジクの木を植えてから、その存在が急に大きくなってきた。イチジクの木を頻繁に上り下りしているのである。不思議な光景だとは思ったがそれほど注視することもなかった。ところがイチジクが熟し、そろそろ食べごろを迎えたときに事件が起きた。イチジクのお尻の部分からアリが大量に出入りしているのである。おそらく中は相当食い荒らされているものと思われる。収穫をあきらめそのままにすることにした。その後完熟したイチジクは落下してしまった。そこへ無数のアリが押し寄せきれいに食べきってしまった。その後も木になるイチジクへの攻撃は続いた。焼酎に唐辛子を漬け、刺激性のある液体を作り、それに酢を混ぜたものを吹き付け、一時的にはアリを撃退したが、その後はイタチごっこである。それでもどうにか菜園主がアリ以上の量を確保することができ一息ついた。

 アリの被害はこれだけではなかった。春先の空豆の新芽につくアブラムシの護衛隊にもなるのである。テントウムシがアブラムシを食べようとやってくるとアリが邪魔をするのである。最近では、夏のまだ熟していない青いレモンにつくカイガラムシの護衛にも手を出している。結構幅広い職種にエントリーしているのである。この光景を最初に見たときは、カイガラムシを食べているものだと思い込んでいた。しかし、一向にカイガラムシが減らないのでおかしいなと思い観察を続けた。その結果、どうやらカイガラムシを食べるのではなく保護しているようなのである。早速カイガラムシを調べてみると、排泄物に糖質が含まれていることが分かった。アリはその排泄物をおいしくいただいているのである。アブラムシの場合と同じである。

 イチジクやミミズ、バッタなどの昆虫はすべて食べきってしまう。しかし、アブラムシやカイガラムシは食べずにうまみのある排泄物をいただく。食べてしまえばそれでおしまいであるが、排泄物をいただく分には長期間収穫することができる。この違いをどのように判断しているのだろうか? アブラムシやカイガラムシはまるでアリが養殖しているようにも見える。アリを主役にすれば非常に興味深い出来事であるが、菜園主はあくまでも収穫にこだわるのでこれは否定せざるを得ない。害虫を養殖されては困るのである。レモンについたカイガラムシをすべて撤去することでアリは来なくなったが、アリのこの行為はなかなか興味深いものがある。

 ひょっとすると、「あれが栽培したい」、「これが栽培したい」という思いは、すべてアリが仕組んで菜園主をコントロールしているのではないだろうか? という疑問がわいてきた。

<アリがせっせと世話を・・・>