石ころ

 わが菜園内には無数の小石が潜んでいる。なぜ小石か? 大きなものは初期の段階ですべて掘り出した。そしてそれらを菜園内の一角に穴を掘りそこへ埋め込んだ。したがってものすごく水はけのいい場所になった。今では雑草や落ち葉で分からなくなっているが、まぎれもなく不毛の一体である。

 栽培が終わったところは、わが愛用のピアンタ(耕運機)で縦横無尽に耕す。そうすると下の方から小石がザックザックと出てくる。耕運機を走らせながら、出てきた小石を拾ってはエプロンのポケットへ入れる。あっという間にいっぱいになってしまう。そうすると菜園の淵のブロック塀の上に並べる。こうして数か月置くと、雨風で細かい土が落ちて小石だけになる。一定量たまると厚手のビニール袋へ入れる。ビニール袋をいっぱいにしたいのであるが、そうすると重たくて持てなくなってしまうので半分程度でやめておく。これは重し代わりに非常に重宝する。ネットやマルチを張ったとき風で飛ばされないように端部を押さえるのに使用する。雑草が多く生えているところへ乗せて、繁殖を防止するのに使用する。菜園のあちこちに置いておくといざというときに重宝する。ただ、長期間に及ぶと、紫外線でビニールが劣化して破れてしまうので、適度に入れ替えが必要である。極端に溜まりすぎると、町内の溝掃除で出た砂や石の回収に便乗して処理してもらうことになる。

 8年間で数十袋分は処理した。それくらい小石が多く出てくる。自然とわいてくる感じである。いまだにこの現象が続いている。小石程度と思うかもしれないがこれが結構悪さをする。ヤマイモは小石に限らず、少々大きな石があっても大丈夫である。自らコースを変え、曲がりながらも成長を続ける。これに比べると、ダイコンやニンジンはそうはいかない。わずかな小石にぶつかっただけで成長を止めてしまう。葉がびっしりと生えそろい、一見見事なダイコンに育っているように見える。一斉に端から抜いていく。わが菜園の粘土質な土から抜き取るダイコンはなかなか抜けない。ほとんどが先端部分で切れてしまう。そんな中、小石にぶつかったダイコンは、びっくりするくらい簡単に抜けてしまう。小石にぶつかった深さにもよるが、半分程度の長さで二股になっている。同じ期間、同じ場所で育てていながら半分の収量しかない。菜園としてのコストパフォーマンスが非常に悪い。たった1個の小石であるがそれが与える損害は非常に大きい。特に菜園主へのダメージは相当なものであ。ここを通る人からすれば、立派なダイコンの葉を見ているので、さぞかし大きなダイコンが育っているものと信じているだろう。それがずんぐりむっくりのカブを一回り長くしたようなVサインダイコンでは恥ずかしくて見せられない。したがって、ダイコンの収穫は人目に付かない早朝か夕方に限るのである。