ナメクジの誤算
家庭菜園をやっていると、いろいろと悩まされることがある。その二大巨頭が害虫と雑草である。鳥はネットを張ることで大きく被害を低減させることができる。ところが、害虫と雑草に関してはそう簡単ではない。もちろん殺虫剤や除草剤を使用すればいたって簡単であるが、それらを使わないことを信条としているので大変である。雑草や害虫の手ごわさはいろいろと書いてきたので、それぞれの部分を読んでいただければわかると思う。害虫の中でも最も手ごわいのがナメクジである。数の多さ、活動期間の長さ、行動力、貪欲な食欲等、トータルで他の害虫をはるかに上回っているのである。
わがアトリエは5月の連休頃から小虫が出だす。夜になると、窓や入口の網戸から入ってくる。網の目より小さなものや、建付けの悪い網戸の隙間から入ってくる。これらを退治するために、作業机の電気スタンドの上部にハエ取りリボンを吊り下げている。これは思ったほどの効果を発揮していないのだが、打つ手がなくてそのままにしている。虫は明りに集まるのであって、明りの上(スタンドの傘で上部は暗い)にはあまり寄り付かないのである。電気スタンドの下に取り付けられればいいのであるが、そうすれば主がくっ付いてしまうのでどうしようもない。網戸を改良できない現状では、その近くに虫が寄ってこないようにするしか方法はない。色々なメーカーから、網戸やドア近くに吊り下げるタイプの虫よけが売られている。早速ホームセンターへ行き、某有名メーカーの吊り下げタイプの虫よけを購入して入り口に取り付けた。その効能書きには、適応害虫:ユスリカ、使用期間:260日、トリプル処方:速く効く、長く効く、最後まで効く、やさしく香るバラの香り、と書かれている。
260日間効果があるということは、ほとんど虫が発生する期間をカバーすることができる。非常にありがたい商品である。取り付けたその日から、何となく虫の侵入が少なくなったような気がする(これはあくまでも本人の感想であって、実際に虫の数を数えたわけではない)。もう一つ気になったのはにおいである。去年も同じようなものをぶら下げたのであるが、無臭のものを取り付けたので気にならなかった。今年は「バラの香り」を購入した。相当なにおいの強さである。ドアを解放した状態で取り付けるにはちょっとにおいがきつすぎる。取り付けたその日の夜、ドアを閉めようとしたときに、壁にナメクジが2匹張り付いているのに気が付いた。今まで壁に張り付いているのは見たことがない。これは何かおかしいと思いしばらく考えていたが、どうやら入り口に掛けた虫よけが原因のようである。このきついにおいに寄ってきたのだろう(注1)。ナメクジはにおいを感知して引き寄せられるということは間違いないだろう。ナメクジにとっては、自然のにおいか人工的なにおいなのかを区別することはできなかったということであろう。それだけこの虫除けのにおいがすばらしいということになるが、人間にはちょっときつすぎるにおいである。
ナメクジにとっては大きな誤算であった。と思いたいが、虫除けを購入してナメクジを呼び寄せたアトリエの主が最も大きな誤算を被ることとなった。
注1:この日は夕方から雨が降り、ナメクジが出やすい条件になっていた。二日目以降は、晴天が続きナメクジを見かけることはなかった。