パワー
春になるといっせいに植物が成長を始める。その成長を促す要因は、日照時間や温度である。真夏になると、菜園に植えられているものは、よほどの晴天続きでない限り散水は必要としない。十分に根を張り水分を吸収できるからである。これらとは対照的に、植木鉢に植えられたものは毎日散水が必要である。狭い鉢では、あっという間に水分がなくなってしまうからである。
植物の地上部分は見えるが、地中に埋まっている根の部分はほとんど目にすることはない。植物を栽培する上で最も重要なのはこの根を観察することである。ほとんど広がらない根(ブルーベリー)、地中深くまで伸びない根(キュウリ)を持つ植物は、真夏に数日晴天が続くとぐったりとしてくる。ブルーベリーは色付き始めた実にしわができ始める。キュウリははっきりと葉がしおれてくる。散水すると数時間で復活する。
全体的に雑草は根が強くて地中深くまで入るものが多い。地上部分だけを見たのではその生命力はわからない。実際に掘り出してみるとその手ごわさがよくわかる。今回、わが作品の「植木瓶」を破壊したのは、リュウノヒゲという植物である。これは背丈が10cm前後で、これ以上は上に伸びないが横に広がる。根をどんどん増やし、株別れしさらに根を増やすことで植木瓶内が限度を超えてしまった。
通常であれば、上へ持ち上がるのであるが、この植木瓶では上に上がることができなかった。この瓶の特徴を生かすために、耳を残し上部を四角く切り抜いたので、瓶上部に角が残ってしまった。そのため上に膨張できず、根のパワーが直接瓶の側面にかかって破裂してしまったのである。
植木鉢の形状はよく見ると、下が小さく上に行くほど広がっている。これは型抜きで製作するのでこのような形になっている。これによるメリットは重ねることで運搬や保管に場所を取らないということがある。それだけではなく、今回のような場合には植木鉢内の根は全体が上へ持ち上がり割れるようなことはない。また、植物が成長したときに植え替えがスムースに行える。植木鉢を逆さにすれば簡単に根全体が抜け出てくるからである。非常によく考えられた形状をしているのである。今後はもう少し実用性を重視した作品作りを心掛けるとともに、植物の特性を理解しておく必要を感じた。
この陶器の植木瓶を両手で引っ張っても絶対に割ることはできない。それほど強固なものをこの小さな植物が割ってしまったのである。この力には驚かされた。植物の生命力の強さはいろいろな場面で目にすることはあっても、このような物理的な力強さを直接目にすることはなかった。何事も粘り強くやり続ければ、必ず結果は出せるということなのだろうか?
<お見事!>
<模様入りの植木鉢か?>
<底まで植木瓶そっくり>
<植木瓶の修復>
<リュウノヒゲ恐るべし>