メダカ

 わが菜園の一角にメダカ池がある。直径60cmのナマコ釉の火鉢である。現在は4匹が元気に泳ぎ回っている。以前はもっとたくさんいたのであるが、徐々に数が減ってきた。原因は不明である。雨で池があふれたことが原因かもしれないので、最近では降水量が50mm程度の雨では池があふれないように水量を減らしている。去年あたりから4匹が定着している。暖かくなるにつれて食欲が非常に旺盛になってきた。水面に浮かんだエサを一気に食べてしまう。彼らはいつも一緒に行動をしているところを見ると仲はよさそうである。上からのぞいているだけでは、雌雄の区別がつかない。雌雄でヒレの形に違いがあるようなこと聞いたことがある。しかし、そこまでして確認しようとは思わないのでそのままにしていた。春先からお腹が大きくなってきたのが2匹いる。もう1匹はやや大きくなっている。ということで、2匹は確実にメスである。いつ頃産卵するのか、と心待ちにしていたがなかなか産卵する気配がない。そうこうしているうちに、例年発生する藻が池の中に広がりだした。とろろ昆布をすまし汁に入れた時のように、細い糸が絡んだような藻である。色はきれいな緑色である。メダカがこれに絡まって泳ぐのに苦労している。これを見てしまうとこのまま放置しておくわけにはいかない。一部をつかんで持ち上げると、つながって全部が持ち上がってくる。相当大きな塊である。通常ならこれを菜園の肥料代わりに捨ててしまうのであるが、今年は少し躊躇した。メダカのお腹が少し小さくなっているような気がしたからである。そこで、持ち上げた藻を一旦池に戻し、水を入れたバケツを持って来てそこへ一時退避させた。

 3日後、バケツを覗いてみると、小さなものが多数動いていた。よく見ると、間違いなくメダカの赤ちゃんである。半透明の3~4mmくらいのものが動いている。頭はしっかりと大きな三角形である。魚は流線型で頭は丸くなっているものが多いが、メダカは頭の先端が平らである。上から見ると、頭を底辺にした二等辺三角形をしている。いかにも水の抵抗が大きそうな形である。尻尾から進めば楔のような形で、非常に抵抗が少なそうであるが・・・。愛嬌のある、いかにも一見してメダカだとわかる形がいい。はっきりとはわからないが、100匹以上はいると思われる。子供であっても親と同じような動きをする。金魚のようにゆったりと滑らかに動くのではなく、直線的にジグザグに一気にすばやく動くのである。まるで夜空に出現したUFOのような動きである(見たことはないが・・・)。こんな小さな体では、親メダカ用のエサは食べることができない。自分の頭くらいの大きさがある。早速ホームセンターへ行き、メダカのベビーフードを購入した。パウダー状で開けた瞬間に鰹節のような香りがした。入れてやると一斉に食べ始めた。よほどお腹がすいていたのであろう。これで一安心である。

 捨てようとした藻であるが、いったんバケツに退避させたことが好結果を生んだ。あのまま菜園に捨てていれば、このかわいい子メダカに出会うことはなかった。日ごろからよく観察をし、予測をするということがいかに大切かを思い知らされた一件である。しばらくはこのバケツで飼育し、その後、親の元へ戻してやろうと思う。一気にメダカ池がにぎやかになることだろう。メダカの学校の始業式は、欧米並みの9月になりそうである。

<メダカ池>

 

<子メダカ>