ジョロウグモ
わが菜園は害虫の楽園である。葉物野菜を作れば穴だらけのすだれかレース編みのような状態にされてしまう。地下に存在する野菜はどうか? これも同様である。サツマイモやサトイモはかじってぼこぼこにされる。意外とジャガイモは大丈夫である。このような菜園で、一生懸命害虫をやっつけてくれる力強い味方がいる。カナヘビ、カマキリ、そしてジョロウグモである。カナヘビとカマキリは他で書いたので、今回はジョロウグモについて書いてみたい。
菜園を始めた頃は多くのジョロウグモが網を張り、しょっちゅう顔にべったりと張り付いたものである。毎回同じ場所に網を張るので気を付ければいいようなものであるが、なかなかそうもいかない。野菜の生育状態や雑草の生え具合を確認しながら歩くので、常に下を向いて歩いている。この行為がジョロウグモにとっては迷惑この上ない。毎回、そのたびに網を張りなおさなければならないからである。大変な労力を必要とするが、それでも場所を変えず網を修繕している。食料を得るために一生懸命網を張っているのである。
そんなジョロウグモが数年前から姿を見せなくなった。やはり、毎回のように菜園主に網を破られることに腹を立てたのかもしれない。何も言わずに一斉に姿を消したところを見ると、彼ら同士での話合いがひっそりとおこなわれていたのかもしれない。組合を作り、菜園主と団体交渉をするような手もあったのに・・・。今思えばかわいそうなことをしたものである。これほど食料(害虫)の多いところはそうそうあるものではない。何とか戻ってきてくれないものかと、心待ちにしていたところ、今年は3匹も戻ってきてくれた。どっしりとしたお腹は見事なふくらみである。大量に害虫を食べたのであろうか。そのふくらみを見るたびに頼もしく思われる。それとも何度でも網を修繕できるように、たっぷりと網の原料が蓄えられているのだろうか。もう、二度と菜園外へ逃げ出さないように、細心の注意を払いながら菜園内をパトロールすることにしよう。
3匹のジョロウグモはそれぞれ一定の間隔(ソーシャルディスタンスではないと思うが・・・)をあけて、お互いの領域を侵さないように網を張っている。いつ学習したのかわからないが、3匹とも網の張り方が同じなのである。菜園主が歩き回っても網が顔にかからない高さに張っているのである。これは見事としかいいようがない。まさにウイン-ウインの関係が成立したのである。
そんなジョロウグモであるが、どっしりと網の中央に居座っているのはメスである。ではオスはどこにいるのかというと、メスから40~50cm程度離れたところでひっそりと暮らしている。じっくりと見なければわからないほど小さい体をしている。近づけば食べられてしまうので遠くからじっと見つめているらしい。
ところで、網の張り方を一斉に変えてきた件をじっくりと考えてみると、菜園内における力関係に変化が起きたような気がしてくる。菜園主の顔にべったりと網がくっ付く状態は、獲物として見られていたのかもしれない。うまくいけば美味しくいただこうと考えていたのだろう。しかし、毎回大切な網を破られるのでは割に合わない。ということで、獲物から厄介者へと昇格したのかもしれない。しかし、あくまでもここは、菜園主が生態系の頂点を極めている、ということをしっかりと認識してもらわなければ困るのである。
<どっしりと構えた雌>
<右上のゴミのようなのが雄>