ハーブ

 ハーブというと、代表的なものはローズマリーやミントなどだろう。おしゃれなイメージがあり、洋食化が進んだ現在では食卓に彩を添えるにはちょうどいい(もっぱらわが家はパクチーが主流であるが・・・)。そう思い、数年前から、わが菜園でもこれらを植えている。しかし、実際はおしゃれなイメージとは程遠く、非常な困難を強いられる。とにかく繁殖力が強すぎるのである。年に数回丸刈りに近いくらいまで刈り込まなければならない。そうしないと辺り一面ハーブだらけになってしまう。特にミントはすごい。1年間で、ミントティーならドラム缶に1杯程度は作れるくらいの量を刈り込む。これらを何とかしなければと、思案を巡らし、最近は菜園の入り口近くの土のやせたところに移植した。それでも相変わらず旺盛に繁殖している。年に数回刈り込み、乾燥させポプリにしている。アトリエ内でかすかな芳香を放っている。菜園の入り口でのさばっているものは、刈り込まずそのままにしている。理由は、通るときにズボンに擦れたり踏みつけられて、そのたびにいい香りを放つからである。特にパイナップルミントは最高にいい香りがする。パイナップルミントとはよく言ったもので、まるでパイナップルがそばにあるかのような香りがするから不思議である。いたるところで雑草が生い茂った状態の菜園にいるにもかかわらず、南国のパイナップル畑に来たような気分にさせてくれる。これほどいい香りのミントなら、生のハーブティーにすれば最高だろうと飲んでみた。夏の暑い日の午後である。菜園作業を一段落させ、喉もカラカラ状態である。冷蔵庫で冷やしたパイナップルミントティーをごくり。一瞬にしてさわやかな香りが口中に広がる。喉が渇いているので冷たさも気持ちがいい。生の葉であるから、もう少し青臭さが出るかと思っていたが、決してそのようなことはない。

 レストランの食事で、メインデッシュを終えるとデザートが出てくる。このとき必ずといっていいくらい横や上にミントの葉が添えられている。見た目は非常にすばらしい。色合いや清涼感は最高にいい。しかし、しかしである。これを食べておいしいと思うことはない。一度食べれば絶対に二度目はない。これを食べている人を見かけたことがない。それにもかかわらず、何故これを乗せるのか不思議でしょうがない。サンドイッチやスパゲッティ(パスタという表現ではない)に添えられるパセリのようなものか。と書いてみて、はたと気が付いた。もしそうであれば、これはありかもしれない。サンドイッチに添えられたパセリも食べている人を見かけたことはない。しかし、あんな美味しいものを食べないのを不思議に思う。毎回、きれいに食べるからである。そう思うと、見ていないところで、ミントが大好きで毎回きっちりと食べている人がいるのかもしれない。そうは思ってみたものの、圧倒的多数の人は食べないわけであるから、これらはオプションにするべきであろう。ミントやパセリがかわいそうでならない。出てきた瞬間は「わーっ、きれい」、食べ終わると「ぽつんとミントがみっともない」。何となく皿についたシミのようで後味が悪い。

 料理は「見た目」「匂い」「味」で楽しむものであるが、あくまでもその大前提は完食できることである。