菜園内には観賞用の花がない。葉物野菜は種を取ることがないので花を見ることはない。果実を収穫するものは花が咲くが、それほどきれいな花はない。白や黄色といった色で地味なものが多い。野菜で最もきれいな花を咲かせるのはオクラである。さすがにハイビスカスの仲間であるだけのことはある。この花はなかなか見事である。唯一空きスペースに植えている花がある。マリーゴールドである。直径3cmくらいの黄色やオレンジ色の菊のような花を咲かせる。これは地中の線虫を駆除する働きがあるということなので植えている。見た目には結構きれいであるが、決して観賞用で植えているのではない。観賞用の花を植えたいのであるがスペースがないのである。菜園内はあまりにも殺風景なので、せめてアトリエ前には花を植えようとバラの木を2種類買った。赤とピンク色のバラで、結構長期間咲いている。赤はやや大ぶりで、ピンク色は小さな花がたくさん咲く。
枝を選定したが、このまま捨てるのももったいないので、ダメもとで挿し木をした。たっぷりと水をやり、日陰に置いておいた。目立たない場所のため、1か月以上もほったらかしであった。ある日、ふと思い出しのぞいてみると、何と見事にすべての挿し木から新芽が出ている。うれしいという感情の前に「しまった!」という思いが先に来た。じっくりと数えると27本ある。これは困った。菜園内は人口密度ならぬ植物密度が高すぎるのである。バラの入る余地がない。多年草であるから、一度植えるとその場所をずっと占領したままとなる。とげがあるので、狭い場所に植えるとしょっちゅう刺さることにもなりかねない。かといって、頑張って発芽したものを捨てるわけにはいかない。これほど大量のバラを植木鉢で育てるには置き場所がない。さて困った。狭いわが家を見渡しても解決策が出てこない。途方に暮れていると、たった一か所だけわが家にもバラを植えるスペースが見つかった。それは数年前から彼岸花が咲きだした非常に狭い庭である。その庭のフェンス沿いぎりぎりにバラを植えるのである。もうすでにここには水仙が植えてあるが、生息する高さが違うのでいいだろう。ついでに歓迎されていない彼岸花も季節になれば勝手に咲く。全く統一性がなく、主義主張のない庭であるが、年間を通して観察している人もいないだろう。花が咲いているだけでも目に優しいと感じてもらえればいい。これから数年かけて、これらのバラをフェンスに沿って広げていくことにしよう。
<オクラの花>
<マリーゴールド>
<バラの挿し木>