ピーナツのひみつ

 

◆5月初旬にピーナツ(おおまさり)のタネを蒔いた。品種のおおまさりは通常のピーナツの2倍近い大きさの豆になる。タネを蒔いてからの注意は鳥、蟻である。鳥対策はネットの中に入れておけば大丈夫であるが、蟻はそれではだめである。台の上に乗せて、蟻が来ないことを確認する必要がある。こうしていても、1、2個は蟻の餌食になってしまう。穴を掘り砂を盛り上げて、土中のピーナツを食べている。なかなかしたたかなものである。

       

 

◆1週間が経ち、そろそろ発芽が始まっている。土の表面がひび割れてきた。1個のピーナツが発芽するだけでこれだけの土を持ち上げるのである。生命のパワーを感じる瞬間である。

       

 

◆ようやく芽が表面に出てきた。この時期はなめくじが大敵である。1晩で柔らかい葉をすべて食べられてしまう。朝起きてびっくり。きれいになくなっていることがある。こちらも蟻と同様に台に乗せて、なめくじが上がってこれないようにする必要がある。なめくじが1晩に移動する距離は相当なものであろうと思われる。地面を歩くものと思われがちであるが、人の背丈程度のところまでやってくる。夜明け頃になると、石の下や土の中へもぐってしまうので、なかなか見つけられない。

       

 

◆順調に生育している。この程度になれば、蟻、なめくじともに問題としない。あとは順調に育つように広い場所へ定植するだけである。この時期になるとポット(ピーナツを植えているビニールの鉢)の中は根がびっしりと回り、行き場のなくなった根がポットの水抜き穴から顔を出すくらいに伸びている。この時の根の状態でいい株とそうでない株が見分けられる。真っ白な根が出ているものはいいが、茶色い根のものは成長が芳しくない。

       

 

◆5月中旬 30cm間隔で苗を植えていく。本来はもっと間隔を空けたいところであるが、何せ狭い場所なので、ちょっと窮屈な栽培となった。麦わらをたっぷりと敷いてある。これは土の表面が乾燥により硬くなるのを防止するためである。この件については、もう少し後で説明をすることとする。ここは土が粘土質で排水性が悪い。したがって、このピーナツを植えた部分は排水性をよくするために10cm程度土を盛り上げてある。ピーナツ栽培は、本来砂地が理想であるが、土質改良は無理なので現状の粘土質での挑戦となる。 

       

 

◆6月初旬 かわいい黄色の花が咲きだした。この花が多く咲けば、それだけ多くのピーナツを収穫する可能性がでてくる。できれば桜のように一斉に咲いてほしいのであるが、ピーナツなりの事情があるのであろう。何となく、だらだらと気が向いたら咲いているようである。花が咲いてから、実が完熟するまでに3か月程度かかるので、7月末までが勝負となる。これ以降に咲いても収穫時期に間に合わない。ぶよぶよの未完熟の実になってしまう。

       

 

◆花が咲いた後は、そこから根のようなもの(子房柄)が伸びてくる。これが地中に入り、ひょうたん形になって、その中にピーナツができる。この子房柄が地中に入りきれないとピーナツができない。したがって、いくら多くの花が咲いても、土の表面が硬くて、子房柄がもぐりこめなければピーナツはならない。土の硬化を防ぐために、上記で麦わらをたっぷりと敷いたのである。秋になれば、これが効果を発揮したかどうかがわかる。

                           

 

◆7月下旬 今年は雑草の成長が著しく、ピーナツが負けそうである。「ガンバレ」とピーナツを応援しているのであるが、何を勘違いしたのか、アウェーであるはずの雑草がより元気になる。こうなれば、ただひたすら雑草を除去するしか方法はない。この作業を行った後、数日はいいのであるが、1週間もするとまた雑草が目立ち始める。結局、雑草とのいたちごっことなり、今までの経験から根負けするのは明白である。それよりも時期的に雑草を除去できない理由がある。雑草を抜こうとして、ピーナツの苗が揺さぶられると、せっかく地中に入り込んだ子房柄が抜けてしまうことになるからである。これを避けるためでもある。世間的にはちょっと見栄えはよくないが、雑草と競争させざるを得ない。この状態で困るのは、道を通りかかった人がそこを指さして、「何が植えてあるのですか?」と聞いてこられることである。「ピーナツです」と答えたいのであるが、見える部分の大半が雑草であるため、聞いた人はバカにされたと思ってしまう。それを避けるために説明するとなると、あまりにも話が長くなってしまうのである。しかたなく、「何も植える予定がないので放ったらかしておいたら草が生い茂ってしまった」、と説明することにしている。収穫時はこっそりとおこなう必要がある。

       

 

10月下旬 今年は涼しくなるのが早かったので、9月下旬ごろからピーナツの葉に力がなかった。そのため10月に入ると、葉がやや黄色味を帯び黄緑色になってきた。8月ごろの勢いは全くなく、ピーナツも雑草も全く元気がない。しかし、雑草はたっぷりと種を付け、来年もここでしっかりと茂ってやろうという気構えが感じられる。もうすでに大量の種をまき散らしている。毎年のこととはいえ恐ろしい光景である。ピーナツの完熟にはまだちょっと早いような気がするが、数株を試し掘りしてみる。 

 ピーナツは完熟すると、表面の網目がきれいに浮き上がってくる。未熟なものは網目が薄く殻がやわらかい。すべてが完熟したものを収穫したいのであるが、気ままに長期間かけて花を咲かせているので、すべてが同時に完熟とはならない。それよりも、完熟したものを長く置いておくと、子房柄(木とピーナツをつないでいるツル)が切れてしまう。通常、木を持って引き抜くと、ピーナツがゆらりゆらりとぶら下がって土から出てくる。ところが、長時間植えておいたものは、このツルが切れてしまう。そうすると、植えていた一帯の土を掘り返さなければならなくなってしまう。これは大変な作業である。そして一個一個拾い集めなければならない。

 とりあえず、試し掘りで収穫したものは、きれいに水洗い(手っ取り早く洗うために、洗濯機を使用する。もちろん洗剤は入れない)をして茹でピーナツにする。関西では見かけないが、関東ではスーパーなどでよく売られている。しかし、掘りたて、茹でたてが最高である。これは栽培した者の特権である。エダマメと同じように塩を入れて茹でるのである。ただ、時間はかなり長めである。しっかりと茹で上がったものの皮をむいて食べるのである。渋皮はそのまま食べるもよし、むけばさらによし。おおまさりは茹でピーナツに最適の品種といわれている。この時期限定の逸品である。冷えたビールが数倍旨くなる。冷凍しておいてもいいが、やはり茹でたてが最高である。

※豆知識:ピーナツのようなマメ科の植物は根に根粒菌を共生させている。これは空気中の窒素を固定させて肥料にする働きをしている。植物には窒素、カリウム、リン酸の3大栄養素が必要でるが、その一つを空気中から得ているのである。水田にレンゲソウ(マメ科)を咲かせ、そのまま耕しているのは窒素肥料を施しているのと同じ効果が期待できる。

            


           <黄色味を帯びた葉>

 

        

             <根粒菌の粒>

 

        

        <おおまさりと普通のピーナツ>

 

       

            <切れた子房柄>      

 

       

             <洗濯機で洗浄>

 

       

              <出来上がり>    

 

◆11月上旬  完熟を目指したため、芋掘りならぬピーナツ掘りになってしまった。木を抜いてもピーナツはほとんどついて上がってこない。子房柄が切れて、ほとんどのピーナツは土の中である。あたり一面をスコップで掘り返しての収穫である。やっとの思いで収穫したピーナツは、水洗いした後、虫食いと未完熟ピーナツを排除する。地中でも、わが家庭菜園は居心地がいいのか、害虫がしっかりと結果を出している。ピーナツに小さな円形の穴をあけたり、頭からがぶりとかみついたりして、中身をごっそりと食べている。今年も結構な数を食べられた。ビール3杯分は飲みそこなった感じである。みなさんに顔を覚えてもらうために写真を添えておく(彼は小さな穴をあけるタイプの害虫である)。考えようによっては、家庭菜園でこの害虫を養殖しているようなものである。この害虫の利用方法を考えたほうが良いかもしれない。しかし、今はあくまでも家庭菜園が主役であるから、しばらくは作物を主にしておこう。

 選別したピーナツはザルに入れて乾燥させる。この時期は晴天でもあまり日差しは強くない。一気に完全乾燥させてしまわないと、殻の中にカビが生えることがあるので要注意である。したがって、収穫するときも晴天が続きそうな日を狙っての作業となる。

 完全に乾燥したものは冷暗所で保存するとしばらくは大丈夫である。乾燥させたピーナツは、炒らなければ青臭くて食べられない。ガスやストーブで炒ってみたが、手間暇がかかる上に殻が焦げすぎてしまう。あまり焦がし過ぎると、割った時にホコリが出て困る。最適な炒り加減は一瞬で過ぎてしまう。それを過ぎると、コーヒー豆のようになり、苦くて食べられない。ほんの一瞬を見逃さないため、炒りながら食べ続けなければならない。これはかなり効率が悪い。最も確実・簡単で美味しく炒るためには電子レンジが最適である。量に合わせて適当な時間をセットしてチンすれば、それはもう八街産(やちまた:千葉県)と変わらない美味しさである。中国産では全く比べ物にならない。コク、香り、味がすばらしい。こちらも茹でピーナツと同じくビールに大変よく合う。しばらくは、このピーナツをつまみにうまいビールが飲める。しかし、静かな夜にはピーナツの殻を割る音がやけに大きく響くのが難点である。

 

        <ピーナツ掘り>

 

       <ビール3杯分を食った虫>

 

        <ビール3杯分の一部>

 

     <切れた子房柄:最長25cm>

 

          <天日干し>

 

 

以上でピーナツは終了です。

次回はムギを予定してます。