141.どら焼き

 某月某日、某有名デパートから電話がかかってきた。お客様サービスセンターだという。「先日当社でどら焼きを購入さておられると思いますが、間違いございませんでしょうか?」 2日ほど前のことなので、まだしっかりと記憶している。そこまではボケてはいない。一瞬にしていろいろなことが頭の中を駆け巡る。窃盗、薬物混入、それとも何かの事件に巻き込まれたのか? なぜ氏名と電話番号まで把握できたのか? 電話をしてくるぐらいだから相当重要なことなのだろう。内容によっては警察沙汰か? ちょっと待ってくれよ! 楽しい人生を謳歌している時にそれはないだろう。

 電話の内容はびっくりするものだった。どら焼きの値段を間違えて50円多く徴収しているので返却したいという。デパートまで取りに行くか、現金書留で受け取るかの選択をしてほしいという。どら焼きはメーカーが包装したもので、そこにバーコードが印刷されている。それが間違っていたのか、あるいは値引き用のシールが貼られていなかったのか? 疑問は尽きないが、そこまでは確認できなかった。とにかくとっさに浮かんだ疑問点だけは確認できた。なぜ、氏名、電話番号までわかったのかを確認した。そのデパートで使用しているポイントカードである。当日の来店客の中からどら焼きを購入した人をピックアップし、そのカード番号を調べれば購入者がわかる。購入者がわかればカード発行時に入力した氏名や住所がわかるということになる。携帯電話は常に位置情報を出し続けている。店や道路には監視カメラがあちこちにある。買い物をすればポイントカードで何をいつ買ったかが記録される。

 先日、庭で花の手入れをしていると私服警官が話しかけてきた。駐車場に止めてある車に取り付けられたドライブレコーダは停車中も記録しているかどうかを聞かれた。近所で高校生が行方不明になっているので、映像を確認させてほしいということであった。あいにく電源を入れている時のみ作動するタイプであったので意に沿えなかった。

 24時間、365日ず―――つと監視されているようなものである。電話番号を把握されているので、誰と誰がいつどこで会っていたか、などということは簡単にわかってしまう。電源を切るか機内モードにすることをお勧めする。

 さて、そろそろ寝るとするか。おっと、携帯の電源を切るのを忘れていた。

 PS.50円の件はどちらも採用しなかった。こちらの確認ミスもあるので受け取りの権利を放棄した。