標準木

 わが菜園内には、ブルーベリーの丘、ラズベリーの森、フキ畑、メダカ池がある、と以前書いたことがある。そこへさらに標準木という表現を用いると、一体どれほど広大なところなのか? と思われるかもしれない。ブルーベリーの丘は、菜園の排水が悪いので小高く土を盛り上げて、そこに数本植えてある。ラズベリーの森は手入れが行き届かず、木が茂りすぎたのでそう命名した。メダカ池は直径60cmの火鉢である。フキ畑は菜園内に自生していたフキをブドウ棚の下の一角に集めて収穫を容易にしている場所である。ここまで手の内を明かすと、おのずと標準木も察しが付くと思うが、結果はさらにその上をいくことになるだろう。

 3月も中旬になると、桜(ソメイヨシノ)の開花がいつになるかという予測が騒がしくなる。騒がなくても、気温が上がれば自然に咲くのが桜である。予想をすることにどれだけの価値があるのかよくわからない。とにかく、年中行事の一環であり、外れたところで責任を問われるわけではない。とりあえず季節感のある話題で盛り上げておけば無難であろうといったところか? 

 そんな騒がしいマスコミに刺激されたわけではないが、わが家の標準木も気になるところである。標準木といういい方をすると、一体何本の桜の木が植えられているのか、という疑問が出てくる。しかし、それほど大騒ぎをする必要はない。たった1本の桜があるだけである。それも盆栽の「一才桜」である。背丈は20cmで、花が30~40輪程度咲くのである。木が1本しかないのであるから、これが標準木になるしかないのである。正確には標準木というよりは標準枝というのが正しい。どの枝のつぼみが最初に開くかということが問題になる。桜は下の枝から開花するのが正しいようである。今年も去年同様に最下段の幹に近い方から咲いた。この標準枝に花が咲くとあとは一斉に咲きだす。

 今年の開花は4月11日であった。ソメイヨシノよりは2週間程度遅れて咲く。花はやや濃いピンクの八重である。この一才桜もソメイヨシノと同様に花が最初に咲き、その後に葉が出てくる。 桜が咲けばつきものの花見をしないわけにはいかない。しかし、桜の木の下で、というわけにはいかない。わずか20cmしかないのである。アトリエへ持ち込み酒宴をと思ったが、アトリエは創造、創作の場であるため禁酒にしている。しかたなく、花見にふさわしい場所を探すが見当たらない。そんな時、ハンモックが目に入った。ここはひとつ趣向を凝らし、ハンモックに揺られながらの花見に決めた。早速、ハンモックの脇に台を置き、そこへ八重桜を設置した。ここで揺られながらの風流な花見となった。ビールもうまいが、まだ少し肌寒いので焼酎のお湯割りの方がさらにうまい。八重の花びらがさらに増したように見えだしたのでお開きにしよう。

<つぼみが膨らんできた>

 

<開花が始まった>

 

<満開!!>