スイカの反撃
毎年小玉スイカの苗を2本植える。真夏の家庭菜園で、大汗を流した時の水分補給を兼ねている。冷蔵庫でキンキンに冷やしたものにかぶりつき、そこら中あたりかまわず種を飛ばす。これがスイカの醍醐味である。種を手や皿で受けたのではうまさが半減である。
経験からくる安全を考慮して、苗は常に2本植える。確実に実が付くのであれば、1本で十分なのだが、不良苗が結構な確率で発生する。こうなるとその年のスイカの醍醐味はなくなってしまう。これを防止するために2本植えることにしている。
スイカは親ヅルが一定の長さまで伸びると、先端を切断して子ヅルが伸びるのを促す。この小ヅルに雌花が咲く。つまりスイカができるのである。ところがどうしたわけか、今年はこの小ヅルに雌花が付かない。雄花ばかりが咲く。これではスイカができない。毎朝見て回るが、雌花は全く咲いていない。そのうちにツルがどんどん伸びて、今までにないくらい広がってきた。どうしようもないくらいの勢いである。こうなると、雌花を探そうにも探せない。スイカは人工的に受粉させて、その日からの日数で食べごろを見極める。自然に任せたのではおいしいスイカが得られない。今年は人工授粉をあきらめ、自然に任せることにした。なるべく早く受粉したものを探し出し、その実に日付けを書いた札をつけることにした。ところがツルが茂り過ぎ、その実すら探し出せない。ひょっとするとつるボケ(注1)という最も恐ろしい現象が起きているのではないかということが頭をよぎった。つるボケかどうかを確認するために、一生懸命つるをかき分け実の存在を確認した。やっとのことで、2個スイカの実があることを確認した。これで一安心である。とにかくこれらを無事に育てよう。
8月になり猛暑の影響もあったのか、ツルの勢いも陰りだし、徐々に地面が見えるようになってきた。と、同時に驚きの現実を目にした。いたるところにスイカがある。数えてみると12個。大きさや音で確認する限り、ほとんど同時くらいに受粉していると思われる。したがって、収穫時期もほとんど同時期になる。スイカは保存がきかない。一度ジャムを作ったが、全く美味しくなかった。スイカは生食しかない。これは大変である。近所の人にあげるとしても、味を確認してからでないとできない。半分に切って味を確認して、おいしければいいがそうでなければ自宅で消費することになる。これだけ多くの実が付けば、味の期待はできない。朝・昼・晩、食後のデザートはスイカ、10時と3時のおやつはスイカである。これと並行して寝酒のつまみはミニトマトである。7、8月は果物太りが恐ろしい。
全く実を付けないと思ったスイカが、こっそりと密かに恐ろしいくらい実を付けていた。一切の世話を放棄し、ほったらかしていたことへのしっぺ返しである。まさにスイカの反撃を食らってしまった。しかし、考えようによっては、真夏の暑さにうれしい誤算となった。
何事も自然に任せるのが最適な結果を生むということか・・・?
(注1)ツルが恐ろしいくらい成長し、肝心の実がまったくできない現象をいう。サツマイモの場合では、ツルがものすごい勢いで茂り、食べるところがないような小さな芋が数個できるだけとなる。
<中へ入りたいがツルを踏みそうなので・・・>
<ここにあった>
<ここにもあった>