彼岸花(その2)

 我が家の庭に彼岸花が咲きだした件は、以前このコーナーで書いた。その件でまたまた不思議なことが発覚した。彼岸花が一斉に咲くと、ほとんど同時期に花が枯れてしまう。その枯れ方が不思議で興味深いのである。一斉に同じ方向を向いてうなだれるのである。すべてが北側に倒れてくるのである。これを見たときはこの花特有の戦略かなと思ったものである。つまり、50~60cmに伸びた茎の先にできた実を、確実に重なることなくその距離だけ北側に種を落とすことができるのである。これを数年繰り返すと、辺り一面ムダな空間を作ることなく広い面積に繁殖することができる。植物のすごい力を感じていたのである。ところが、数年たつが、我が家の庭が想像通りの展開になってこない。今まで生えていたところの密度は増してくるが、北側へ50~60cmいったところには全く彼岸花が生えてこないのである。すべてが北側に倒れることも不思議であるが、そこから芽が出てこないのはもっと不思議である。

 そこで彼岸花について調べてみると、「彼岸花は3倍体であるため種ができない」という説明があった。「3倍体とは、体細胞の中の染色体組が、形態的にも生理的にもそれ以上に分けられない数 (基本数n。→ゲノム ) の3倍の染色体数 (3n) をもつ倍数体をいう。一般に、三倍体植物は種子ができない。この現象を応用してバナナや種なしスイカがつくりだされた」となっていた。早速花が終わった部分を見てみると、実になるであろうと思われた部分が、すべて黄色く萎びた状態で、触るとぽろぽろと落ちてきた。というわけで、我が家の彼岸花は3倍体であることから種子ができないのである。したがって、球根を分球するしか繁殖の手はないのである。これでちょっと安心をした。わが家の彼岸花が一斉に北に向かって倒れる戦略はまったく意味をなさないものであることがわかった。それにしても不思議な行為である。自然界にある彼岸花も同じような戦略を取っているのだろうか? ちょっと気になるところである。ひょっとすると、球根はすべて南側へ分球し、茎は北側に倒れるということかもしれない。もしそうであれば非常にありがたい。わが家の彼岸花は種ができないので北側へは広がらない。南側はブロック塀のためそれ以上広がれない。南北からの包囲網の完成である・・・・はずであるが、確実に密度は増している。要するに、南側への移動が東西に分散しているのである。

<満開の彼岸花>

 

<すべて北側へ・・・>

 

<先端の種>

 

<萎れた種>