ヤマイモ
ヤマイモは粘りが強く、スライスすれば最高の酒の肴である。味噌汁で伸ばしてとろろ汁もいい。思い浮かべるだけでよだれが出そうである。しかし、その前にこれを土の中から掘り出さなければならない。これがどれほど大変な作業であるか? かつて九州の山中で、天然の自然薯掘りを経験した。20cmごとに折れた自然薯、手のひらにできたマメ、膝に付いた赤土、翌日は腰、肩、腕が痛くてたまらなかった。これが思い出である。自然薯を掘るためには、直径50cm程度の穴を70~80cmの深さまで掘らなければならない。そうしないと完全なものは掘り出せない。ちょっとでも楽をしようとして穴を小さくすると、結果はすぐに出る。自然薯の曲がりに対応できず、ポキッと折れてしまう。地面に膝をついて掘るのである。腰が痛くならないわけがない。自然には家庭菜園と違って、大きな石がたくさんあり、出くわすたびにさらに周りを掘らなければならない。結局、自然薯掘りは、この時の1回で懲りてしまった。こんな苦労は二度としたくない。しかし、天然物は非常に旨い。これを家庭菜園で作れないか? 簡単に掘り出せる栽培方法がある。それは波板を斜めに埋め込み、その上に芋を植え付けるのである。そうするとヤマイモは下に伸びることができず、波板に沿って斜めに伸びる。したがって、掘り出しは簡単にできる。しかし、この場合1mの波板を埋めなければならない。わが菜園ではとても許可できる面積ではない。許せるのは下方向のみである。ではどうするか? せめて、30cm分だけでも上に伸ばせば、それだけ掘る深さが助かる。どうやって上へ伸ばすか? 雨どい(長さ:60cm)を向き合わせて円筒を作り土に埋め、上部を30cm地上に出すのである。そうすれば、地上部分の30cmは掘らなくいい。そして、雨どいに囲まれた長さ60cmは折れなくて済む。あとはヤマイモの長さに合わせて残りの部分を掘ればいい。結構いいヤマイモが収穫できる。もちろん、天然物に比べると楽に掘り出せる。夏場にツルがものすごく伸びるが、これは支柱に上らせて、頂上まで行くとUターンさせて下へ向ける。こうすることで、小さい面積で栽培することができる。そして、楽しみの一つであるむかごも収穫できる。むかご飯もいいが、蒸して塩をかければいい肴になる。
掘り出したヤマイモはそのままでもいいが、やはり口当たりを良くするために皮をむきたい。この作業はぬめりがあり結構大変であるが、作業が簡単にできるいい製品を見つけた。ゴム手袋の表面に多数の突起物が付いており、これでこするだけできれいに皮がむけるのである。真っ白なヤマイモが顔を見せると、おもわずかぶりつきたくなる。
ヤマイモはむかごを植えるのではなく、小さな芋を植えるのである。これだと1年で十分食べられる大きさになる。2年置くとさらに大きくなる。雨どいが広がり、その間から多数の根が飛び出してくる。菜園が粘土質のため、いいヤマイモが育つ。これを1本掘りだすと、5回は十分に食べられる。5本も植えておけば、一冬中美味しい酒が飲める。非常にありがたい冬の恵みである。
<この筒が7本埋めてある>
<秋も深まり葉が色付くと収穫>
<芋が横からはみ出している>
<1回目の収穫完了>