150.猫舌

 猫舌である。熱いものは食べられない。かといって熱いものが冷めたのでは旨くない。肉などが冷めた場合は全く旨くない。冷しゃぶなどという食べ物はもってのほかである。では、ラーメンはどうやって食べるのか? コップに入れた冷水を用意する。それを注ぎ、食べごろの温度にする。ちょうどいい程度に温度が下がったところで一気に食べる。これで猫舌を気にせず、麵も伸びることなくおいしく食べることができる。大満足であるが、冷水を注ぐタイミングはちょっと難しい。店員、客の目がこちらを向いていないことを確認し、ある程度の量を一気に注ぐ。その後一度温度を確認し、まだ熱いようであれば再度注ぐ。ここで確実に適温にする。3度目はなしである。ここは経験がものをいう。一度、客であるカップルに目撃されたことがある。何やらごそごそと話し出したのを覚えている。おそらく「熱いのが食べられないのなら冷麺を食べればいいのに」といった表情であった。ラーメンは熱くなければ旨くないのである。

 ラーメン、たこ焼き、揚げ物はとんでもなく熱いのである。それらをなぜ口に入れるのかが理解できない。口を閉じられず、ハフハフいいながら顎を上下させている。大量の空気で冷ましているのであろう。それなら、もう少し冷やしてから食べればよさそうなものである。猫舌にはそれは絶対にできない。入れた瞬間に吐き出すしかない。熱すぎてハフハフができないのである。

 同じ人間でありながらこうまで熱さに対して違いがあるのか。あまりにも気になるので調べてみた。それによると、「猫舌の人は舌の使い方が下手なのである」となっていた。最も熱さを感じる舌の先端部分を接触させているというのである。熱いものを舌の中央へ持ってくれば熱くないという。やってみたが熱いものはどこに接触しても熱いのである。舌だけではない。上あごの皮がむけたことがある。そのようなものを食べても旨くない。食べやすい温度で食べるのが最もおいしいのである。人間として、同じ細胞で構成されているにもかかわらずそれほど大きな違いがあるとは思えない。おそらく細胞に相当な負荷がかかっているのではいだろうか。近いうちに異常が発生するのではないだろうか。

 と、猫舌を正当化する考えで自らを納得させて、心静かにコーヒーを飲んでいた。ふと疑問が出てきた。このコーヒーはおそらく熱いだろう、相当熱いだろう。温度を測ってみたところ82℃であった。ごくごくではなく空気を入れながらすすっているので温度はそれほどでもないだろう。60℃のお茶はごくごく飲めても、60℃の風呂には入れないだろう。体の部分によって感じる熱さに差があるのである。これですべてが解決である。猫舌は舌の話にするから勘違いするのである。口の中全体が熱さに耐性がないのである。適温に下がるまで待つか、待てなければ強制的に下げて食べるのがベストである。

追記:鉄板に乗ったステーキは、鉄板と木製の受け皿の間に冷水を注ぐと一気に冷めて美味しく食べられる。